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前野良沢(まえの-りょうたく)は、福岡藩士・源新介の子として、江戸時代の1723年に生まれました。
父は江戸藩邸に詰めていたようですが、幼い頃に両親を亡くした為、母の親戚で、淀藩の藩医をしていた宮田全沢に養育されました。
その後、医者として成長した前野良沢は、前野珉子と結婚します。
前野良沢の妻である前野珉子(まえの-たまこ)は、和歌をたしなんでいたようですが、没年は寛政4年2月くらいである事しか分かりません。
1743年頃からは、オランダ書物に興味を持ち、蘭学を志すようになり、晩年の青木昆陽に師事しました。
1748年(寛延元年)に、前野良沢は、妻・珉子の実家である、中津藩の医師・前野東元の養子となりました。
このため、姓名が前野と言う事になります。
こうして200石ないし300石と高禄で中津藩医となりました。
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1769年(明和6年)には、中津藩主・奥平昌鹿の参勤交代(江戸から中津行き)に同行して九州の中津へと下向すると、その足で長崎に遊学し西善三郎・吉雄耕牛から学びました。
そして、1770年、長崎で西洋の解剖書「ターヘル・アナトミア」を手に入れます。
ターヘル・アナトミアは、ドイツ人医師クルムスがドイツ語で書いたものをオランダ語にて翻訳された解剖学書でした。
その解剖本を江戸に持ち帰ると、1771年には中川淳庵も江戸城に来ていた長崎・出島の商館長・カピタンから、見せられて、杉田玄白に購入の仲立ちをしています。
ただし、お金が足りず、杉田玄白は小浜藩の家老からお金を借りたと言いますので、相当高価な書物だったようです。
この頃、江戸幕府は医学の発達のため、ようやく解剖を許可しており、明和8年(1771年)3月4日、小塚原の刑場において罪人の腑分け(解剖)が行われる際に、蘭方医の杉田玄白(39歳)・前野良沢(49歳)・中川淳庵らが集まりました。
その時、前野良沢と杉田玄白の2人は、ターヘル・アナトミアを所持しており、実際の解剖と見比べて、このターヘル・アナトミアが正確であることに驚きます。
そして、杉田玄白はから前野良沢は「日本語に翻訳」して広めようと提案されたのでした。
翻訳には更に桂川甫周が加わりましたが、当初、杉田玄白と中川淳庵はオランダ語が分からず、オランダ語の知識があったのは前野良沢だけでした。
しかし、翻訳の中心人物となった前野良沢も完璧にオランダ語を理解しているわけでは無く、日本語訳は難航したと言い、実際に間違っている個所も見受けられると言います。
そのため、約3年5ヶ月もの日数が掛かりましたが「解体新書」は1774年(安永3年)に発刊されました。
現在使われている医学用語でもある日本語で「神経」「軟骨」「動脈」「処女膜」などの言葉は、この解体新書で始めて使われましたと言う事です。
なお、解体新書を著作した人物として、前野良沢の名はありません。
実際には、本の序文に名前が見受けられますので、携わっていたことは読めばわかる状態だったようですが、名が無いのは、前野良沢が翻訳の不備があると認めていたとも、杉田玄白が配慮したとも言われています。(諸説あり)
例えば「十二指腸」がありますが、これは誤訳だそうです。
本来は臓器の名称ではなく、指の幅12本分の長さ(約25cm)の消化管と言う意味ですが、いまだに訂正されないどころか、正式な医学用語として定着しています。
このように問題もありましたが、解体新書が刊行されたあと、日本の医学が発展したことは間違いありません。
翻訳を終えたあとも蘭学に対する熱心な姿勢は変わらず、藩主・奥平昌鹿より「蘭学の化け物」と賞賛され、これを誉とした前野良沢は「蘭化」と号しました。
オランダ語を学んだ弟子には司馬江漢、一関藩の医師・大槻玄沢(おおつき-げんたく)などがいます。
ただし、前野良沢はオランダ語研究に夢中になりすぎて、本来の仕事である藩医勤務を怠り、同僚の藩医らから職務怠慢を訴えられています。
しかし、藩主・奥平昌鹿は、前野良沢を咎めることは無く「日々の治療も仕事だが、その治療のために天下後世の民に有益なことを成そうとするのも仕事である」と言い、支援したと言われています。
晩年は加齢による眼病や中風に苦しんだと言いますが、前野良沢は1803年の11月30日に亡くなりました。享年80。
現在のお墓は、東京都杉並区梅里の「慶安寺」で、前野良沢や妻・子の戒名も一緒に刻まれている墓碑となっていると言います。
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2018年の元旦に放送されるMHKの「正月時代劇」風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇では、前野良沢を片岡愛之助さん、妻・珉子(たまこ)を長野里美さん、長女・富士子を中島亜梨沙さん、次女・峰子を岸井ゆきのさんが演じられます。
しかし、妻の情報も上記の通り僅かでして、娘さんの情報は皆無でした。
解体新書と申しますと、杉田玄白の名前ばかりが知られますが、今回、そんな裏側もドラマで放送されるようですので、より歴史の真実が伝わるようで楽しみでございます。
・杉田玄白と解体新書~解剖学の功績やエピソード
・平賀源内~エレキテルで知られる多芸多才な時代の先駆者
・蘭方医(らんぽうい)の解説
・風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇 主演者・キャスト一覧リスト
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