航空自衛隊や海上自衛隊にはアメリカ軍と北朝鮮を攻撃する能力はあるのか? 専守防衛とは

専守防衛



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海上自衛隊は、2017年の北朝鮮の核実験・ミサイル発射実験に備えて、展開したアメリカ海軍の空母ロナルド・レーガン(CVN-76)に、護衛艦隊を合流させることも検討していると言います。
しかし、日本の海上自衛隊や航空自衛隊に、金正恩氏の北朝鮮を攻撃するだけの能力はあるのか?/ないのか?、解説してみたいと存じます。

日本の自衛隊の兵器や装備は、海外(国外)から日本を攻撃してくる敵に対処する兵装が主となっています。
そのため、現状としては、アメリカ軍が北朝鮮を攻撃しようとしていても、それに一緒に加わって、北朝鮮を攻撃するのは困難だと言えます。

爆撃機はそもそも持っていませんし、航空自衛隊の爆撃能力は、陸上部隊を支援すると言うことに主眼が置かれており、敵国の基地などを攻撃することは想定していません。


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海上自衛隊においても、巡航ミサイルを発射できる装置はありますが、ミサイルがありません。
これには、意味がありまして、日本の防衛は「専守防衛」(せんしゅぼうえい)と言う考え方ですので、外国を攻撃することは想定していないからです。

その自衛隊の装備に関して、もう少し、詳しく、記載してみたいと思います。

航空自衛隊の場合

もし、航空自衛隊で日本国外(海外)にて、対地攻撃を行う場合、唯一現実的なのは、国産の戦闘機「F-2」を使用するのが攻撃スタイルとなります。
しかし、空対地ミサイルは持っていないので、誘導爆弾の投下になりますが、F-2用には精密誘導爆弾があります。
ただし、敵の陣地近くまで自ら飛んで行って、爆弾を落とさなくてはならないため、敵国の上空を飛行すれば、迎撃されてしまうリスクがあります。
電子妨害機も持っていません。
また、もともと、遠方に飛んで行って攻撃することを想定していないので、北朝鮮まで行くと航続距離の問題もあります。
ただ、一部のF-2には空中給油装置がついているので、KC-130HやKC-767から途中で「空中給油」を受ければ、できないことはありません。

F-15JやF-4EJでも、爆弾の搭載は可能ですが、精密爆撃はできませんし、日本の防衛をおろそかにしてまで、攻撃機として活用するのも防衛リスクが伴います。
ただし、この日本の対地攻撃能力は、アメリカやロシア以外の国にとっては、まぁ、普通の攻撃方法ですので、例えばシリアの内戦でも、敵地まで飛んで行った航空機が撃墜されていることもあります。

2017年12月になって、F-15搭載を想定した航続距離900kmの巡航ミサイル「JASSM―ER」と「LRASM」と、F-35搭載用の約300kmの空対地ミサイル「JSM」を新規採用することを検討すると発表がありました。
いずれも、まだアメリカでも実戦配備されていない、開発中の新型ミサイルです。

亜音速で飛ぶJASSM-ERはロッキード・マーチン製で、1発1億6000万円とも言われています。
LRASMは、そのJASSM-ERを発展させたミサイルで、ハープーンの後継とされています。
JSMはノルウェーの会社がF-35向けに開発中の、対艦・対地の巡航ミサイルです。
F-35での運用はブロック4から可能となる見込みですが、日本に納入される機体はブロック3ですので、バージョンアップも必要となります。

海上自衛隊の場合

護衛艦のイージス艦などに搭載されているミサイル発射機(Mk41)は、色々なミサイルを発射できますので、艦対地ミサイルも搭載可能です。
しかし、護衛艦はすべてにおいて、対潜ミサイル「アスロック」と艦対空ミサイル「スタンダード」「シースパロー」、艦対艦ミサイル「ハープーン」「90式艦対艦誘導弾」などしか搭載していません。
要するに「専守防衛」ですので、日本に接近する敵艦や敵機、ミサイルと言った脅威に対処する能力は有していますが、敵地を攻撃できる巡航ミサイル「トマホーク」と言うような、艦対地ミサイルは、持っていない・買っていないのです。
そのため、もし、護衛艦が地上を攻撃するとなると、5インチ砲と行ったような「砲撃」のみとなりますが、その場合、射程距離は40kmに満たないので、地上攻撃できたとしても、沿岸だけとなり、逆に短距離ミサイルなどの応酬を受けるリスクが伴います。

そのため、海上自衛隊が、今回、北朝鮮付近で展開している空母ロナルド・レーガン(CVN-76)に合流したとしても、日本やアメリカに向けて発射された弾道ミサイルの迎撃任務が主目的となり、北朝鮮を攻撃するだけの能力は持ち合わせていないと言う事になります。
急きょ、予算が承認されて、海上自衛隊がトマホークを購入したとしても、寄港して積み込みし、さらには何回か「訓練」は必要です。
そのため、買ったからすぐに撃てると言うものでもありません。

ちなみに、過去の歴史にて「空母」を使って戦争した経験があるのは、アメリカ・イギリス・日本だけです。
しかも、他国の空母が、母港として利用できる港湾設備(海軍基地機能・メンテナンス機能)が整っているのは、日本だけとなります。

専守防衛

専守防衛と言うのは、自分の方から先制攻撃を行わず、相手国の攻撃を受けてから、国土・領土またはその周辺で、必要な軍事力を行使して「守備」と「防衛」に徹すると言う意味になります。
要するに「自衛」のために最低限の準備と最小限の能力を持ち、防衛のみに行使を行うと言う事で、敵地への攻撃・先制攻撃はしないと言う方針です。
また、極端な話、敵が1発撃つまで、日本側は反撃もできないと言う事になります。
そのため、もし、攻撃を受けた場合には、初動が遅れて、大きな損害を得てしまう可能性も危惧されており、防衛上の困難も予測できます。
仮に先制攻撃能力を持とうとすると、今の装備・機材などでは足りないため、そうなると、防衛予算の増額だけでなく、自衛官も増強も必要となるため、人材不足の日本では今となってはなかなか難しい側面もあります。
極端な話、兵士が足りないよと言う事になると、徴兵制となることもあり得るのです。
例えば、タイの調整兵は、ツボに入っている「くじ引き」で、約10%が徴兵されるようですが、そのような事態になることがあるかも?知れません。

余談となりますが、日本の防衛予算は、GDPの1%となっているので、毎年5兆円程度です。
世界の軍事費と比較しますと7位イギリス、8位が日本で、9位が韓国と言う順番くらいです。
1位は当然アメリカで日本の10倍予算があります。
2位は中国で、日本の8倍くらいの軍事費を掛けています。
ロシアは5位くらいで、日本の4倍くらい。

以上、日本に海外を攻撃する能力は有していないと言う話でした。

(参考)防衛白書

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高田哲哉日本の歴史研究家

投稿者プロフィール

高田哲哉と申します。
20年以上、歴史上の人物を調査している研究家です。
日本全国に出張して史跡も取材させて頂いております。
資格は国内旅行地理検定2級、小型船舶操縦士1級など。

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