伴兼之と榊原正治(榊原政治・榊政利)の解説 西郷隆盛への思いと鱸成信

田原坂



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伴兼之・榊原正治とは

伴兼之(ばん-かねゆき)、庄内藩出身の志士でしたが、西郷隆盛が薩摩に下野すると、榊原正治(さかきばら-まさはる)と共に遠く山形の地から鹿児島に渡り、私学校に入ります。
2人は大変優秀で、私学校はフランスに留学させようと派遣を決めていたと言います。
しかし、1877年に鹿児島士族が決起して薩摩軍が創設されると、薩摩藩と関係なかった2人は、西郷隆盛や篠原国幹らから、庄内に帰って国家のために尽くしなさいと強く説得されました。

もとは、薩摩と敵であった2人も「西郷先生を慕っており、この一大事に郷里に帰ることはできいなから軍勢に加えて欲しい」と何度も懇願したと言います。
もし、断られたら、腹を切ると言う覚悟だったようで、2人は従軍を許されました。


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西郷隆盛は戊辰戦後の戦後処理にて、庄内藩に対して非常に寛大な処置をするよう、黒田清隆に命じました。
庄内藩は、幕命とは言え、江戸の薩摩藩邸焼き打ちを実行した際に薩摩藩士は64名の死者を出しており、戊辰戦争のキッカケを作っています。
しかし、長州の大村益次郎の大反対を押し切って、庄内藩の領地はそのまま安堵させたのです。

結果的に、大村益次郎の工作で新政府は、16万石から12万石に減封して、焦土と化していた会津へ移らせましたが、庄内藩の家老・菅実秀の手腕もあり、会津藩が解体と流刑となったのとは逆に、庄内藩は比較的軽い処分で済みました。
そのため、庄内藩の人々は西郷隆盛に恩義を感じており、西南戦争の際には、他の旧庄内藩士も鹿児島に駆け付けようとしたとされます。

伴兼之は、五番大隊一番小隊長・河野主一郎に属して、熊本城攻囲軍にも参加。
その後、3月3日、田原坂へ転戦しますが、3月21日、伴兼之は熊本の植木(田原坂の戦い)にて戦死しました。
20歳でした。

榊原正治(榊政利)は、田原坂にて伴兼之の亡骸を守りきったとされています。
その後、薩軍が後退すると、人吉城での戦いの御船戦にて咽喉に重傷を負いました。
榊原正治(榊原政治)は、延岡の病院(宮崎県の成就寺)に入って手当てを受けましたが、5月10日に戦死しています。享年18。
このように、若き2人は西郷隆盛のために命を捧げました。

2人は現在、鹿児島の南洲墓地に眠っていますが、墓は庄内の方向を向いています。
<追記> 他の戦死者と同じ方向を向いています。2人の近くにある福岡出身の死者の墓は逆の方向、つまり福岡を向いています。とのご指摘も賜りました。

また、東北は酒田の地にも、西郷隆盛を顕彰する「南洲神社」が建立されています。
涙なしでは、語れませんね。

なお、この若き庄内藩士だった2人の話は、これだけでは終わりません。

伴兼之には12歳年上の兄・鱸成信(すずき-なりのぶ)がいました。
廃藩後に活路を求めた兄・鱸成信は、酒井忠篤の内意を受けて新政府軍に入隊しており、皮肉にも西南戦争にも従軍し、田原坂にて兄弟は敵同士となったのです。
迫田大隊に属し、陸軍少尉となっていた鱸成信は、先の高瀬の戦いでキズを負い、久留米病院に送られていました。
しかし、再び戦場に入って、熊本城に籠る熊本鎮台と連絡をとるため、強行突破の指揮を取りましたが、4月6日に田原坂で戦死しています。享年34。



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明治12年になって、伴兼之の三兄・秋保親兼(秋保家に入ってのち衆議院議員となっている)が、鹿児島の南洲墓地を訪れています。
このとき、出迎えた鹿児島の人々は皆「非常なお気の毒なことをした。西郷先生始め、皆で是非郷里に帰るようにとおすゝめしたのですが、どうしても聞き入れなかったのです。」と話をしたと言います。

このような歴史的な観点から、山形県鶴岡市と鹿児島県鹿児島市の両市は「兄弟都市盟約」を結んでいます。
現在も薩摩と庄内の人々の間では、西郷隆盛を通じて志士たちが考えた日本の将来を思う「心」が受け継がれているのではないでしょうか?

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高田哲哉日本の歴史研究家

投稿者プロフィール

高田哲哉と申します。
20年以上、歴史上の人物を調査している研究家です。
日本全国に出張して史跡も取材させて頂いております。
資格は国内旅行地理検定2級、小型船舶操縦士1級など。

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