郷中教育とは~相撲から剣術稽古など行い日頃より鍛錬した教育制度と西郷隆盛らの関係

郷中教育



スポンサーリンク


郷中教育は、ごうちゅうきょういくではなく「ごじゅうきょういん/ごちゅうきょういく」と読み方も色々ありますが、その薩摩藩独自のこの教育制度をご解説したいと存じます。

まず「郷中」(ごじゅう)と言うのは、簡単に申し上げますと、町単位の組織で、幕末の鹿児島の城下町には、数十戸単位で約30個の郷中があったと言います。

その中での「郷中教育」と言うのは、武士階級の青少年を町単位で教育していこうと言う教員法で、薩摩では藩政の上で効果が高かったそうです。


スポンサーリンク


一番上に立つものは「おせんじ」と呼ばれる「長老」で、概ね25歳を超えた若者が担当しました。
その下で、実質的に子どもたちを監督・指導するのが「二才」(にせ)と呼ばれる若者で、だいたい、15歳~24歳くらいの青年となります。
そして、そんな二才らから教育を受けるのが「稚児」(ちご)と呼ばれる、6歳~15歳くらいの青少年です。

最大の特色としては「教師がいない教育」と申しましょうか、先輩が後輩を指導します。
そして、同じ立場の者同士は、お互いを助け、学びつつ教え、また、教えつつ学ぶというような集団教育となります。

教える内容は学問もありましたが、これは早朝に、子供がひとりで好きな先生の家(近所の藩士のところ)行って、儒学や書道などを学びます。
誰から何を教わるのかは、子供が自分で決めて良いのです。
そして、あのあとは、毎日、輪番で決めた集合場所に、子供だけで集まって、車座(くるまざ)になり「今日は何を学んだのか」を、ひとりひとり、口頭で発表します。
ときには、討議(せんぎ)して、自分の考えを発言し、そして、情報を皆で共有すると言うので、驚きです。

そのあとは、川遊びや山遊びや、神社の境内などで相撲を取ると言う体力づくりから、道徳、剣術といった訓練などを子どもたちだけで行いますが、内容は多岐に渡ります。
ただし、武士ですので、特に剣術は重要なため、非常に厳しかったそうです。
そして、二才らは稚児に稽古をつけたあと、自分たちの稽古も行いました。

西郷隆盛が育った時代の加治屋町は、6つの郷中に分かれていました。
そのうち、西郷吉之助が所属していた郷中は「下加治屋町」で、大山巖や東郷平八郎など、多くの偉人を輩出しています。
加治屋町から甲突川の対岸となる高麗町出身としては大久保利通がいますが、まもなく下加治屋町に引っ越したため、西郷隆盛と同じ郷中になったと言うことになります。

郷中教育においては、統一された指導要領もないことから、教育方針も統一されていませんが、概ね下記のことは、決まっていました。

長老には従え、先輩のゆうことは絶対、弱いものをいじめるな、嘘をつくな、どんな場合でも刀は抜くな・・。

郷中の掟

武士道の義を実践せよ
心身を鍛錬せよ
嘘を言うな
負けるな
弱いものいじめをするな
質実剛健たれ
たとえ僅かでも女に接することも、これを口上にのぼらせることも一切許さない
金銭利欲にかんする観念をもっとも卑しむこと

特に上下関係は厳しかったと言い、このように子供のうちから、肉体的にも精神的にも徹底した鍛錬教育が行われたのです。
ケンカをするにしては、相手が降参したり泣いたりしたら、それでおしまいと言うルールもあるなど、

なお、このような郷中教育の原型は、戦国時代にはすでに全国で広まっていたそうです。
字が書けない下級武士らは、書物から学ぶことができなかったため、要するにみんなで集まって、色々なことを「想定」しては、議論して最善の策を予めイメージトレーニングしたと言います。
要するに「学習会」ですね。



スポンサーリンク


例えば、5000の敵が攻めてきた際に、1000と言う少人数でも勝てる方法はあるか?と言う「想定」に対して、みんなで意見を出し合い、最終的な解決策を考え、それを全員で共有すると言うことです。

このような郷中教育により、信念を貫き通す若者が薩摩では育ったといえ、鹿児島県では受け継がれているようです。

西郷隆盛 【西郷吉之助】詳細版~薩摩藩が排出した幕末の英雄
西郷隆盛の家族や両親兄弟など「西郷家」の一覧リスト【西郷どん】
有馬新七と寺田屋事件とは~強硬に尊王攘夷を実現しようと
大久保利通(大久保正助、大久保一蔵)~詳細版~日本史上最高の政治家
有村俊斎の幕末~大きな出世にはならなかった海江田信義の生涯とは
大山格之助【大山綱良】薩長同盟に調印した薩摩藩士
仙巌園(磯の御殿)のみどころ ~世界遺産にも選ばれた仙巌園の素晴らしい庭園など
西郷吉兵衛と西郷満佐子とは~西郷隆盛の父と母と使用人の熊吉も
西郷琴とは~西郷隆盛の妹で西郷家の長女である西郷コト・市来琴の生涯
岩山糸~西郷糸子とは 西郷隆盛3番目の妻の生涯~武町屋敷跡と南洲野屋敷跡
黒木華さんプロフィールと経歴「銀熊賞」も受賞している実力派
磯田屋で西郷吉之助と再開する「ふき」や「タマ」役の柿原りんかさん、高梨臨さん、田中道子さん



スポンサーリンク


高田哲哉日本の歴史研究家

投稿者プロフィール

高田哲哉と申します。
20年以上、歴史上の人物を調査している研究家です。
日本全国に出張して史跡も取材させて頂いております。
資格は国内旅行地理検定2級、小型船舶操縦士1級など。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


スポンサーリンク


Twitterfollow

共有御礼申しあげます



スポンサーリンク
ページ上部へ戻る